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ふるさとの峠と街道 雲石街道(阿井越) その3

株式会社 菁文社

高野町新市。この道を北上すれば出雲仁多郡へ通ずる。「ふるさとの峠と街道 雲石街道(阿井越) その3」

高野町新市。この道を北上すれば出雲仁多郡へ通ずる。

「ふるさとの峠と街道」は、第1部 ふるさとの街道、第2部 ふるとさの峠 として2部構成でお届けします。
 第1部「ふるさとの峠」は、昭和54年(1979)5月から「げいびグラフ」誌上に“峠を語る”シリーズとして21回にわたって連載したものです。今では交通機関の多様化とこれに伴う土木技術の発達により大巾な改修がすすみ、峠は旧来の峠としての機能を失って、峠の存在すら忘れ去られています。
   このたび、あえて連載当時の記述に修正を加えることなく取材当時の内容を再掲し峠を歴史の証として伝えることにしました。



【街道編 雲石街道(阿井越) その3】

― 三次から新市 ―



 口和町と高野町の境金尾(かなお)山峠を越す。戦後の三次 ― 高野線はモータリゼーションによって、竹地谷の谷を通って防地峠を経過する道路に変わっているが、戦前は金尾峠経由が通常の通路になっていた。江戸時代ここは交通の難所で、文政2年(1819)の古文書に「冬には凡そ6、7尺(約2メートル)から1丈3、4尺(約4メートル)も降り、凍死する者も多く、豪雪の節はしばしば交通が途絶する」所であった。中国山地の真ただ中にある台地高野町へ行くのには、どちらの方向からも峠を越さないといけない山の中にある。
 冬に大陸からの冷たい風が日本海で水分をたっぷり補給されて、中国山地へ当たって豪雪をもたらす。高野町は広島県有数の豪雪地帯で、昭和38年の「サンパチ豪雪」では4.25メートルも降ったという。
 高野は中世には多賀(たが)とか多気(たけ)とよばれていた所で、語源は大きな山を意味する嶽(たけ)にある。
 金尾峠を上った所が高野町の奥門田(おくもんで)である。ここに花栗(はなぐり)明神とよぶ小社祠がある。蔀山城主高野山通広とその子又四郎を殺して、果たし打ちになった一族花栗弥兵衛の亡霊を祭ったものである。
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 高野町はすでに12世紀京都の蓮華王院(三十三間堂)の荘園となっていたところ。鎌倉時代には関東武士団の山内首藤氏が地頭に補任され、新市の蔀(しとみ)山に本拠を構えていた。山内氏が庄原市山内の甲山(こうやま)城に南遷したのちは、一族の高野山氏の支配するところとなっていた。
 毛無(けなし)山山塊の南端に位置して築かれた蔀山(しとみやま)城も、コンパクトながら山の三方が屹立(きつり)つし、守るに易く攻めるに難しい県の史跡に指定されている名城である。『陰徳太平記』は、天文4年(1535)毛利元就自ら2千余騎を率いて、この城を包囲し、水の補給路を断ってようやく攻略したことが述べられている。
毛利・尼子激突の間にはさまれ、高野山氏の去就も転変としたが、その故か毛利氏が山陰の支配に成功したのちの天正年間、遂に蔀山を接収され亡された。
 蔀山城主高野山通信が毛利によって亡された背景に、一つのエピソードが伝えられている。
蔀山城を中心とした江戸時代の通俗史書である『士富山軍記』によると、通信が杵筑明神参詣の帰途、偶然西城の久代兼秀の姫と出会い、見染めてしまった。通信は既に黒岩城主和泉氏の姫を妻とし、一子をもうけていたが、その妻を離縁し、旅廻りの瞽女(こじょ)に託して西城の姫に艶文を送ったりする。離別され黒岩城へ帰された妻は恨みの余り、八国見山明神へ呪いの願をかけたところ、久代の姫は物狂いし、蛇体となって池へ入水してしまったという。また、通信の振舞いに怒った和泉氏配下の農民は、金尾峠で高野山氏の家臣を殺すという事態も生じた。
 かかるとき、毛利輝元は通信が振舞い驕奢増長、催促の軍役懈怠(けたい)として遂に改易を命じ、高野山氏は亡んだという。
なお、同じような話が西城の久代(くしろ)氏の盛衰を扱った通俗史書『久代記』では、久代の姫は八鳥の東某という若侍に恋い焦がれて「今櫛の池」へ入水して死んだとある。
 栄枯盛衰の歴史を秘め、高野の自然は今日も静かに横たわっていた。(藤村耕市)






◆次回は後鳥羽上皇配流の道「甲山から新市」 を紹介します。




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基本情報

名称株式会社 菁文社
フリガナ株式会社 菁文社
住所728-0023 三次市東酒屋町306-46
アクセス国道375号線三次工業団地口交差点より北へ850m
電話番号0824-62-3057
ファックス番号0824-62-5337
メールアドレスgeibigrf62-3057@seibunsha-f.com
営業時間8:30~17:30
定休日土・日曜、祝日
駐車場あり
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