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新連載:ふるさとの峠と街道 その18-①

株式会社 菁文社

「ふるさとの峠と街道」は、第1部 ふるさとの街道、第2部 ふるとさの峠 として2部構成でお届けします。
 第1部「ふるさとの峠」は、昭和54年(1979)5月から「げいびグラフ」誌上に“峠を語る”シリーズとして21回にわたって連載したものです。今では交通機関の多様化とこれに伴う土木技術の発達により大巾な改修がすすみ、峠は旧来の峠としての機能を失って、峠の存在すら忘れ去られています。
   このたび、あえて連載当時の記述に修正を加えることなく取材当時の内容を再掲し峠を歴史の証として伝えることにしました。



【草ノ峠(くさんだお/比婆郡高野町)その①】

― 幻の「荒あら鹿かノ坂」 ―


 比婆郡高野町上里原(あがりはら)地区から北方へ、中国山地の脊梁を横断して、島根県飯石(いいし)郡頓原町宇山(うやま)地区へ通じる道がある。県境の付近が草ノ峠で、地元の人はくさんだわと呼んでいる。昭和54年(1979)6月には、既に忘れられ草や雑木におおわれた幅70センチほどの旧道を、峰越林道草ノ峠線として甦らせ注目された道である。
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「中国新聞」昭和54年6月13日の記事を紹介しよう。
『……かつては瀬戸内海と山陰地方を結ぶ交通の要路として栄え、車時代を迎えてすっかり人通りが途絶えていた“幻の峠道”が12日、峰越林道として生まれ変わった。比婆郡高野町~島根県飯石郡頓原町間に延べ6.2キロ。8年がかりの完成を祝う町民らは「両町の文化・経済の交流が再び盛んになる」と期待している。
 完成した林道は、県境の草ノ峠(標高941メートル)を中心に、山腹を幅4メートルで縫うように走っている。森林開発を目的に総工費5億6千万円で47年に着工、高野町から県境までの2.3キロは51年春には完成したが、島根県側の3.9キロが積雪地帯のため工事が遅れていた。(中略)
 開通式は、12日午前11時から草ノ峠で行われ、松田広島県林務部長や美濃地島根県農林水産部長、升原高野町長ら約50人が出席した。三島頓原町長は「峠を越える道は古来、両町を最短距離で結ぶ交流の要路だった。再び県境を越え待望久しい交流ができ、林業の発展も望める」と喜びの言葉を述べ、この後、両町長ら4人が紅白のテープにはさみを入れ参加者から大きな拍手がわいた』
 と、はなやかに峰越林道開通を伝え、これが再び両町の交流をもたらすのみならず、沿道の林産資源の開発も期待できるといっている。草ノ峠の新しい時代の到来を告げているようだ。
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 8世紀の『出雲風土記』の飯石郡の条に『備後国恵宗郡の境なる荒鹿(あらか)坂に通うは三十九里二百歩なり。径(みち)、常に剗(せき)あり』とある。「恵宗」は恵蘇で現在の比婆郡西方一帯の古名である。つまり飯石郡家のあった掛合(かけあい)あたりから「三十九里」余り南方へ行ったところに「荒鹿坂」という峠があり、ここが備後国との国境に当たっていて、常時、関所が設けられていたという。「常に剗」は、まつりごとなどの時に臨時に設けられる権の剗(かりのせき)に対する施設で、古代の幹線道路である通路(かよいじ)に指定されていたのである。
 この「荒鹿坂」を、最初に草ノ峠と比定したのは江戸時代の『芸藩通志』であった。
『…荒鹿山(坂カ)は今、上里原村の内に赤の谷(あかのたに)といへるあり、或は、荒鹿の転称にてもあるべきか、今も飯石郡頓原よりの往来路、ひらけてあり、此外荒鹿という路聞えず、但今の和南原越にあたれるや、知らず……』
『芸藩通志』は「荒鹿坂」を草ノ峠に比定する理由として
(1)上里原に「赤ノ谷」という地名があり、アカノがアラカに変化したもの。
(2)現在(江戸時代)も往来が盛んである。
(3)外にアラカという地名が見当らない。
 以上3点をあげている。
 以来この説は「荒鹿坂草ノ峠説」の有力な根拠となり今日に至っている。
 しかし、江戸時代には『通志』も指摘しているように、頓原から大万木山(おおよろぎやま)の東を通り門坂(かどさか)峠を経て和南原村(現=高野町和南原)の篠原(しのんばら)へ通じるルートも盛んに利用されていた。もしアラカに比定される地名が、このルート上に発見されれば「荒鹿坂門坂峠説」も不思議ではない。





◆次回は草ノ峠その②を紹介します。



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基本情報

名称株式会社 菁文社
フリガナ株式会社 菁文社
住所728-0023 三次市東酒屋町306-46
アクセス国道375号線三次工業団地口交差点より北へ850m
電話番号0824-62-3057
ファックス番号0824-62-5337
メールアドレスgeibigrf62-3057@seibunsha-f.com
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定休日土・日曜、祝日
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