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ふるさとの峠と街道 雲石街道(赤名越) ②-その1

株式会社 菁文社

海抜630mの赤名峠。「ふるさとの峠と街道 雲石街道(赤名越) ②-その1」

海抜630mの赤名峠。

「ふるさとの峠と街道」は、第1部 ふるさとの街道、第2部 ふるとさの峠 として2部構成でお届けします。
 第1部「ふるさとの峠」は、昭和54年(1979)5月から「げいびグラフ」誌上に“峠を語る”シリーズとして21回にわたって連載したものです。今では交通機関の多様化とこれに伴う土木技術の発達により大巾な改修がすすみ、峠は旧来の峠としての機能を失って、峠の存在すら忘れ去られています。
   このたび、あえて連載当時の記述に修正を加えることなく取材当時の内容を再掲し峠を歴史の証として伝えることにしました。



【街道編 雲石街道(赤名越) ②-その1】

― 三次から赤名 ―


 中国地方は、その脊梁をなす中国山脈の山なみによって、北と南ではちがった文化・風土をはぐくんできた。
 重畳たるこの山なみには、いくつかの峠(たお)が通じている。その一つである雲石街道(赤名越)は、歴史上最も重要な役割をになってきたルートである。
 すでに奈良時代初めの『出雲風土記』に、飯石郡の郡家(ぐうけ)よりの道程の一つとして「備後国三次郡の三坂に通うは81里なり。径(みち)、常に剗(せき)あり」と記している。この文中の「三坂」について、地元の布野では赤名から布野へ通ずる赤名峠、千日峠(せんにちだお)、仏(ほとけ)ガ峠の三つの峠のことだという解釈もあるようだが、「御坂(みさか)」が転じて「三坂」になったものかも知れない。というのは、同じ『出雲国風土記』の仁多(にた)郡の項に、備後国(現高野町)へ通ずる道について述べた部分で「この山に神の御門あり、故に御坂という」とあって、神の入り口にあたるから「御坂」だとしている。赤名峠も神無月に出雲国をめざして神々が集まる通路になっていたところからついた名で、「三坂」というのは、赤名峠のことかも知れない。ついでながら高野町から仁多郡阿井町へ通ずる王貫(おうぬき)峠とうげも神々の通路の一つで、峠の備後側のふもと和南原(わなんばら)の杉(すぎ)神社は、神無月に出雲へ向かう神々を、出雲の神がここまで出迎えに来るという伝説をもつ神社である。
 万葉歌人として名高い柿本人麿も、石見国の官人として都から現地へ赴くのに、三次 ―赤名のコースを辿ったというのは有名な斎藤茂吉の論考である。
人麿のことをおもひて眠られず
   赤名越えつつ行きておもぼゆ   斎藤茂吉
         *
 江戸時代、赤名 ― 三次 ― 甲山 ― 尾道のコースは、銀の路=シルバーロードとして有名であった。石見の国大森銀山(現大田市)は、中世末期から近世にかけて全国有数の銀山で、幕府直轄のもとに経営され、ここで産出する銀・銅は陸路尾道へ運ばれ、そこから大坂へ船積みされた(なお、吉舎から分かれて同じ幕府領である上下を経て、備中の笠岡港へ運ばれるコースもあった)。すでにその最盛期をすぎた19世紀初頭の文化年間でさえ、毎年初冬には銀・銅の赤名越え輸送のために、馬約300匹、人夫約400人という大部隊が、近在の農村から動員されていたことが記録に残っている。雪や霜にぬかるむ、けわしく曲折する赤名峠を、人々は馬と共に数百貫の銀・銅を背に、延々と列をなして登り下っていったのである。
 浄土真宗が、備南地方から県北へ拡がり、さらに出雲・石見へと布教していったのも、この赤名峠を越えてのことであり、三次の照林坊は、備後・山陰にかけて200余の末寺をかかえた一大教団であった。また、大社詣での人々の往来したのもこの峠であった。
 この雲石街道の備後側の最北端の宿駅が布野宿である。布野の地名の語源は「浮沼(ふぬま)」で、大昔、布野の沖積平野一帯が湿地帯になっていたところからついた地名だという。布野の宮原という所に、今は水の枯れた池があるが、この池が最後まで湖水の溜まっていた池だと伝えている。
 布野村を通る江戸時代の旧街道は、沖積平地の東側の丘陵地帯を縫って北上し、それがずっと海抜230メートルの高さを保って曲折して通っているのは、それ以下の海抜の所が湿地帯であった古代からの道が、そのまま江戸時代の道になっていた可能性もある。
 一般に道路は、古い道路を拡張・改良してその上に新しい道路に造り直す場合が多いが、布野村では江戸時代の道と、明治になって作られた道、それに戦後のモータリゼーションによって作られた道と、それぞれの時代の歴史を物語る三本の道が、平行してほぼそのまま残っている珍しい村である。




◆次回は雲石街道(赤名越) ②-その2を紹介します。



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基本情報

名称株式会社 菁文社
フリガナ株式会社 菁文社
住所728-0023 三次市東酒屋町306-46
アクセス国道375号線三次工業団地口交差点より北へ850m
電話番号0824-62-3057
ファックス番号0824-62-5337
メールアドレスgeibigrf62-3057@seibunsha-f.com
営業時間8:30~17:30
定休日土・日曜、祝日
駐車場あり
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