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ふるさとの峠と街道 その21-②

株式会社 菁文社

峠の頂上にある王居峠神社。「ふるさとの峠と街道 その21-②」

峠の頂上にある王居峠神社。

「ふるさとの峠と街道」は、第1部 ふるさとの街道、第2部 ふるとさの峠 として2部構成でお届けします。
 第1部「ふるさとの峠」は、昭和54年(1979)5月から「げいびグラフ」誌上に“峠を語る”シリーズとして21回にわたって連載したものです。今では交通機関の多様化とこれに伴う土木技術の発達により大巾な改修がすすみ、峠は旧来の峠としての機能を失って、峠の存在すら忘れ去られています。
   このたび、あえて連載当時の記述に修正を加えることなく取材当時の内容を再掲し峠を歴史の証として伝えることにしました。



【王居峠(おいだお/比婆郡比和町)その②】

― こめられた歴史と想い出 ―


 国道432号線は古来の街道であり、高野町新市の中央三叉路には、高さ1.5メートル、四角形の石の道標が立っている。安政5年9月、上下町大黒屋三郎右ヱ門が施主建立で“東、金ひら・上かた道。西、みよし・広しま道。北、大やしろ・一ばた道”と刻まれている。東上かた道を王居峠に進めば蔀山麓を経て下湯川に至るが、ここの尻無(しりなし)川橋畔に自然石で造られた『比婆山神社』の夜燈が立っていて、遥かに王居峠を越え比婆山を眺望されるが、現在この付近は道路改修工事中である。
町境王居峠の道は黒石山系の低い所を堀割りして開通したものであり、昔の道筋は、比和町側は峠麓の森脇山王権現社跡より分岐し、右は森脇・越原(おっぱら)を経て吾妻山・西城町へ通じ、左は峠の下の三草(みくさ)谷北側斜面を登って高野町上湯川郷原に通じている。この道を旧道といっているが、明治中期に新往還道が開設される時に現在の路線とされ、三草谷の南側の急な山下を谷川に沿って登り、三草橋で大カーブをして北側山腹を蛇行し、旧道と合し頂上に至る。この新道区間は約2800メートル、旧道は約1000メートルで新道の3分の1程しかなく“近路”ともいい、峠の頂上を徒歩とバスで同時に出発すれば、新道はカーブが多く距離も3倍あるためか、山王別れのバス停には徒歩が早く着く。車時代に入るまでは人の往来は旧道が主で、県道はバスや車が時々通るのみであった。殊に積雪期は除雪車もなく交通が途絶した。昭和38年(1963)1月豪雪時には食糧品や郵便物・新聞等の輸送のため、消防団と町民の協力により道路除雪作業を行った。
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 比和町から王居峠頂上に登れば高野町案内板が立っていて、その前の家が屋号も王居峠という坂口孝三氏(73)の居宅である。昭和初期迄は“峠の茶屋”で、旅人の宿屋と馬車挽き荷物運送等の問屋を営んでいた。
 坂口氏宅の南側に近接して社叢が高く広がり鳥居が見えるが、その前方に辻堂がある。新往還道開通前の旧道が西の水田に延び当時を偲ばせる。この神社は王居峠神社である。旧上高野山村村社で王居峠荒神社とも称えられ、伝えて『後鳥羽上皇隠岐御遷幸の途次、暫く蹕を駐め給いし事あり、里人その遺跡の湮滅(いんめつ)をおしみて社を建立し素戔嗚尊を勧請した』という。
 土地の伝説を坂口孝三氏に聞くと、当時山頂にあった荒神社を現在地に遷して、上皇を合祀したとも伝え、芸藩通志の「御所地山」は神社付近を呼び、土地の人々は昔から「ゴショノズ」と言っている。国道北側の小山を「御室山(おむろやま)」と称し、山頂面積約4アールで平坦であり、昔の荒神社跡とも伝えるが、それより5メートル位下に堀があり、堀の水は俵原(たわらばら)川の鈩谷より底のない細長い木桶を継ぎ合わせ、サイホンとして谷水を注入していたという。御室山の南麓国道に面して坂根・井本・福島氏と家屋が並んでおり、福島敏晴氏宅前に小さな湧水池がある。ここの水を山上の行在所へ飲用水として運び上げたと伝えられ、現在も頂上への道がある。
 八幡神社は王居峠神社の西方約300メートル、国道に沿って立派な社叢が見える。龍山八幡宮とも呼ばれており、この水田一帯を龍山沖というのは上皇行在(あんざい)所に因でいる。社叢は広島県天然記念物に指定され、特にガヤの大木は珍しく、王居峠神社社叢も高野町天然記念物であり、両社ともスギ・ヤマモミジ・ミズキ・エノキ等の大木が茂り、県北でも社叢景観を代表するものとして有名である。
 比和町側の三草橋から三草谷川に沿って山道を登り、高野町に越せば三草原(みくさばら)という。ここから王居峠神社近くまで約8ヘクタールの草地が広がっており、昔は御草原(みくさばら)と称し馬乗り馬場であったという。
比和町郷土史家白根英之先生にお尋ねすると、古来王居峠神社に近い比和町の農家の人達は、春の苗代種蒔が終わると稲の安全成長と豊作祈願のために、比和町森脇山王別れから旧道を徒歩で登り神社参詣の風習があったが、現在は各家が自家用車で参詣して豊作祈願を続けていると語られた。









◆次回は峠編終章です。



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基本情報

名称株式会社 菁文社
フリガナ株式会社 菁文社
住所728-0023 三次市東酒屋町306-46
アクセス国道375号線三次工業団地口交差点より北へ850m
電話番号0824-62-3057
ファックス番号0824-62-5337
メールアドレスgeibigrf62-3057@seibunsha-f.com
営業時間8:30~17:30
定休日土・日曜、祝日
駐車場あり
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