新連載:ふるさとの峠と街道 その2-2
株式会社 菁文社
「ふるさとの峠と街道」は、第1部 ふるさとの街道、第2部 ふるとさの峠 として2部構成でお届けします。
第1部「ふるさとの峠」は、昭和54年(1979)5月から「げいびグラフ」誌上に“峠を語る”シリーズとして21回にわたって連載したものです。今では交通機関の多様化とこれに伴う土木技術の発達により大巾な改修がすすみ、峠は旧来の峠としての機能を失って、峠の存在すら忘れ去られています。
このたび、あえて連載当時の記述に修正を加えることなく取材当時の内容を再掲し峠を歴史の証として伝えることにしました。
【宇賀峠(うがだお/甲奴郡甲奴町)その②】
― 二つの名をもつ峠 ―
新道になって甲奴側から吉舎への往来は頻繁になった。かつて吉舎町の商圏にあった広定村(現在の宇賀・小童)の人々は、吉舎に市がたつと峠を越えて買い物に行くのが常だった。
宇賀に住む福本大一さん(83)は
「樽をかついで吉舎まで醤油を買いに行ったもんです。峠の頂上に茶店が二軒あって、帰りにそこでお茶と饅頭で一服するのが何よりの楽しみで……。旅人や荷馬車を曳く人がここで一休みしていて、結構茶店は繁昌していたようですにゃ」
また、吉舎の羽森盛雄さん(80)も
「毎日きまったように荷馬車が吉舎と上下の間を、数台連ねて往復していたので、わしら田圃に出とっても、ああ荷馬車が通るけぇそろそろ昼時よのー、ゆうて時計がわりにしとったですよのー」と、何れも昔を懐かしむようであった。
そうした悠長な風景も、自動車の普及増加によって次第に姿を消し、のどかだった峠に排気ガスがたちこめるようになった。乗用車の離合さえ困難なこの峠道は、カーブの連続であるにもかかわらず、三次方面から福山への一番の近路とあってトラックやダンプの往来が激しく、冬にはスリップ、転落などで死亡事故が何件も起きている運転者泣かせの道でもある。
宇賀峠にトンネルを通すか、既存の道を拡幅するかは早くから論議されていたが、結局後者を採用して昭和48年から道路改修工事に着手し、既に部分的にはバイパスが完成して諸車が通行しており、58年までには全面2車線の快適な峠道になり、事故もなくなるものと期待されている。
宇賀の木村林一さんは
「この道がよくなれば、吉舎まで5分で行けるでしょうにゃ。今まで上下に買物に行った人も、今度は吉舎、三次へ行くようになるでしょうにゃ」
ドライバー泣かせのこの峠も、ここ数年のうちに見違えるような変身をするだろう。
(昭和55年3月)
【写真:宇賀峠 甲奴側の登り口】
◆次回は『上根峠』を紹介します。
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